我孫子稲門会

 そもそも私は学校の同窓会というものに出たことがない。小中高はすべて佐賀の公立校を卒業し、大学以降は東京で過ごしたので距離的な問題もあるし、性格も内向的で多くの人と騒ぐようなこともあまり好きではない。
 大学を出て、就職した会社でも同じ学校を卒業したもの同士で集まるようなこともなかった。飲んだ席で、たまたま卒業した大学の話が出て、同じ大学だったのかと知って、多少の親近感が湧く程度でそれ以上になるようなこともなかった。早稲田出身者が多すぎるのだ。旧帝大系を卒業した人たちが、それを誇示するのを聞くのも「たかだか4年間を過ごしただけではないか」と思うだけだった。
 ある日、近所に住む先輩から、といってもその方が同じ早稲田出身だと、その時に初めて知ったのだが、「今度、我孫子稲門会が出来たので出てみませんか」と誘われて、近所づきあいもあるし、どんなものかと思いつつ出席したのが、第一回目の総会であった。久しぶりに「都の西北」を歌って、懐かしく思った程度で、たいした感激もない。二三回出て、そのあとは出るのをやめてしまった。
 
 定年後になって、近所の小学校で太極拳を習おうと思い、近隣地域で始まったスポーツクラブに入会し、太極拳とペタンクを始めた。ペタンク仲間の一人が我家の郵便受けに我孫子稲門会の案内を入れてくれた。彼の勧めであれば出ないわけにはいかないと思って、数年振りに我孫子稲門会の総会に出席した。総会そのものは数年前とちっとも変っていなかったが、二次会でカラオケに誘われ、歌がうまいとおだてられて分科会のようなグループに入会した。この会のユニークなところは、何でもよいからあるテーマについてお話することである。それが終ってからカラオケを始める。
 お話しする内容は発表者によって異なるが、話題がバラバラに分散することがなく、それなりに面白い。最近気が付いたのはそこでみんなで話しながら、声を出していることが一種の発声練習になっていることである。もちろんアルコールも声を出す良い潤滑油の役割を果す。

 この文章を書きながら、むかし、お客様を誘導しながらブレーンストーミングをやっているとき、「何でも良いから、発言してください。一度話し始めるとあとはカラオケと同じで、気楽に意見が出せるようになりますよ」と言っていたことを思い出した。カラオケでマイクを握って離さないような現象もしばしばであったことも。
 会議の席などで、発言の無い人には、質問を投げかけることにしている。そうすると、その人の発言が増えてきて、全体的な雰囲気が良くなる。その前提として、必ず名前を覚えておき、名前で呼びかけることが重要なのだ。
 それ以降は我孫子稲門会にも出席することになった。

早稲田大学大熊講堂