ドクターX

『これは一匹狼の女医の話である。
 大学病院の医局は弱体化し、医者のヒエラルキーは崩壊、命のやり取りをする医療も、ついに弱肉強食の時代に突入した。
 その危機的な医療現場に現れたのが「フリーランス」すなわち一匹狼のドクターである。
 例えばこの女、群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器だ。
 外科医、大門未知子またの名を「ドクターX」。』

 2012年からテレビ朝日がシリーズで放映している医療ドラマ「ドクターX~外科医大門未知子」のナレーションである。昨年まで、4回にわたってテレビ化され、各回、9~11の独立したエピソードが挿入されている。今年も10月12日からシリーズ5として毎週放映される予定になっている。各エピソードは1時間。
 テレビでシリーズとして放映されているのは、「水戸黄門」や「遠山の金さん」などで、今年は配役が替わるが、毎週、同じ時間帯に放送され、ストーリーは、ワンパターンで、それでも、見終わってからすっきりするので誰からも人気がある。現代劇でも、「踊る大走査線」や「相棒」などがある。
 テレビ化されたと書いたが、原作は無く、脚本家が創作している。脚本家もシリーズによって交替している。
 私はこれまで、このドラマの存在を知らなかったし、友達との会話にも出てこなかった。知ったのはAmazonのプライムビデオに入っており、無料で何度も見ることができ、たくさんあるテレビドラマの中でも人気のあるシリーズだったからである。BGMも少し良質なイヤフォンを使うと素晴らしいサラウンドで聞くことができる。

「ドクターX」はどこの医局にも属しておらず、大学病院などに派遣され、神業にも近い腕を持ち、不可能と思える手術(オペ)をも敢然と行い、すべてを成功させるフリーランスの医者で、症例報告も論文も出さない。そのかわり、金銭には汚く、高額の報酬を要求する。本名はわかっていない。以上、ドラマの中で米国の雑誌に紹介されているが、ドラマではドクターX=大門未知子として扱っている。大門未知子はお金に汚くもなく、神原名医紹介所に属しており、所長の神原晶(あきら)には父が残した借金を払っている。
 大門未知子は特技「手術」、趣味「手術」と称して、外科手術以外は踊ること、食べること、麻雀が大好きで、まったくの世間知らずで医師免許が無くてもできることには一切関心がない。相手が誰であろうと歯に衣着せぬ物言いと態度で接する。その代わり、患者には親切で、病院内では、院長や教授などの権威を全く無視する。味方は同じ紹介所に属する麻酔科医の城之内博美だけである。なお、麻酔科医というのは現実的にも、他の病院から依頼され、所属する医局から派遣されて手術に参加することがしばしばあるようだ。
 ストーリーはエピソード毎に異なるが、未知子は他の外科医が不可能と思われるオペも完璧、スピーディに処理するが、その功績は院長以下、誰からも認められず、他の医師が執刀したかの如く扱われる。それでも、手術して、完治すれば満足する。オペを引き受けるときは「わたし失敗しないので」、論文執筆や院長回診など断るときは「いたしません」の一言でバッサリとやってしまい、反感を買う。
「ドクターX」とは誰か、ドラマでは明かされないが、未知子の師として彼女から慕われる神原晶のようである。未知子にさえアドバイスするほどの知識と経験を持つが、医師免許を剥奪されている。マネージャーとして、未知子や城之内の報酬を集金するのが主な仕事で、毎回高額だということも、「ドクターX」であることを裏付けている。「水戸黄門」が決して切られたりしないのと同じく、決して失敗しない大門未知子のオペシーンも安心して見られることが、20%の高視聴率を保つ理由なのかもしれない。

 配役は大門未知子を米倉涼子、城之内博美を内田有紀、神原晶を岸部一徳が演じている。院長や教授たち、いわば悪役を伊藤四朗、西田敏行などが演じているが、第三シリーズでは院長役を北大路欣也が演じており、公正な役柄で未知子にも理解を示す。
 このドラマを見て、最初に惹かれたのは米倉涼子の魅力、スタイルの良さである。スラリとして超ミニスカートをまとった生足の長さは、さすが、15年のクラシックバレーの経験、ファッションモデルの経験がものを言っている。
 麻酔科医の城之内博美役の内田有紀もファッションモデルを経験しており、カッコ良く、米倉涼子の良い引き立て役になっている。西田敏行のイメージはどうしても「釣りバカ日誌」の浜ちゃん役から抜けきれないし、新「釣りバカ日誌」ではスーさん役で、彼のキャラは相変わらずのイメージが強い。


エンディングタイトル

黒革の手帳

 珍しく、松本清張原作の小説をテレビで見た。最近は清張の小説がたびたび放映されている。今年は清張没後25周年だからかもしれない。
松本清張といえば、私が中学生の頃から、「点と線」「眼の壁」「ゼロの焦点」など多くの推理小説を読んでいた。テレビが無い頃で、貸本屋から借りて読んだ。ほとんどが光文社のカッパノベルスだった。
その頃は、長編推理小説が好きで、短編小説はあまり好きではなかった。読んで後味の悪い小説では「霧の旗」がある。これに似た小説が今回テレビで見た「黒革の手帳」である。何度もテレビ化されているが、今回は武井咲が主人公、原口元子を演じている。2004年の米倉涼子主演版と、ストーリーはほぼ同じである。
原作とは時代がかなり違っているのでストーリーの展開も異なる。原作の原口元子は34歳程度だが、武井咲は23歳、銀座で最も若いママと言われている。武井咲はすごい美人で、私が好きな女優の一人であるが、原作の主人公はどちらかといえばブス。床を同じくする安島が原作では敵で、テレビでは味方。第8話まであるが、最後はあっさりと二人とも検察に拘束されて、幕切れになる。この展開では、多分、米倉涼子バージョンと同じく、続編があると期待している。
原作は清張らしく、緻密な情景描写やストーリー展開だが、推理小説ではない。ピカレスク小説(悪漢小説)という分野で、小悪漢が大悪漢に立ち向かっていくのが大筋になっている。やくざ映画みたいなものだ。シリーズ物の一話である。テレビは武井咲の美しさやファッションを売り物にしていると思う。また、「清張史上最強の悪女」としているが、原作では、小悪魔が巨悪のグループの罠に引っ罹り、自滅していくというのに近い。もし、その通りであれば、武井咲ファンの私に言わせると可愛そうとしか思えない。
武井咲05 武井咲09
武井咲14 武井咲13
武井咲11 武井咲04
武井咲15 武井咲16