昨年は早実の優勝でいつもより熱心に夏の高校野球を見たが、今年はさらに気合を入れてテレビに向かった。母校の佐賀北高校が開幕戦から出場したからである。13年前の佐賀商業のときと同じ展開となった。 結果ではあるが思いもよらず、あれよあれよと勝ち進みついに夏の高校野球で優勝を勝ち取った。
まず第一回戦は8月8日の開幕試合で福井商業との対戦、2-0で初めての甲子園勝利。初めて甲子園で校歌を歌ったこと、これが出場時の目標であったと監督さんが言っていた。安打数では伝統校の福井商が上だが佐賀北の馬場から久保へのリレーと守備の良さで勝った。副島の今大会1号となる本塁打で決まった。
次の試合の相手は14日に三重県の宇治山田高校。4対4で勝負決まらず、15回まで延長で再試合となった。去年の決勝戦、早実対駒大苫小牧戦を思い出させる試合となった。再試合は翌々日の第一試合となった。馬場、久保のリレーは強い。打撃も好調で9-1の勝利。
3回戦は群馬の前橋商業で2回に相手の2点本塁打からスタートとなったが、すぐに馬場のランニングホームランで同点に追いつく。そのあとは佐賀北のペースで5-2の勝利となった。佐賀北にとっては初めてのナイターであった。
準々決勝は東東京代表、優勝候補の帝京高校である。得点こそ一度も相手にリードを与えなかったが、横綱帝京の攻撃に何度も佐賀北の好プレーで得点を許さない守備の堅さがすばらしい試合にしてくれた。まさに死力戦と言っても良い好試合であった。お互いにスクイズの出し合いで息をもつかせないような試合であった。3-3で延長戦に入り、幕切れは13回裏にあっさりと3連打で佐賀北の勝利となった。宇治山田戦で15回を戦った経験が、あと少しという気力の弛みで2アウトからの3連打を許してしまった帝京を破った。 百崎監督は甲子園で開幕試合、15回戦再試合、ナイターと初めての経験ばかり、あとやっていないのはサヨナラ勝利くらいだと言っていたそうだ。それがこの試合のまさかの勝利で実現した。
準決勝は昨日試合をしている長崎日大との試合である。体力の点では一日休みを貰っている佐賀北の方が有利である。隣県同士の対決は佐賀北の試合運びのうまさで3-0の勝利。すべてが3塁まで走者を送った後の得点であった。最初の1点は2回裏でのスクイズ、こんな早い回でのスクイズは相手も警戒はしていない。2点目は相手投手のワイルドピッチでの得点。3点目は代打で四球、代走で盗塁、送りバントのあとで浅いレフトフライだったが巧い走塁で得点した。ほとんどヒットなしでの得点で勝利だった。 長崎日大の監督は完敗だと言ったそうだが、まさに佐賀北ペースの試合であった。
決勝戦は8月22日に行われた。テレビの前でじっと待機した。まあ、ここまでくればいいや、選抜優勝の常葉菊川に勝って決勝戦に進出した広島の広陵高校が相手ではとても勝てそうにないし、準優勝でもたいしたものだ。 広陵高校といえば「佐賀のかばいばあちゃん」の主人公が城南中学を卒業して、かあちゃんのいる広島に帰り、推薦入学した高校である。伝統校で決勝戦は2回戦ったが一度も優勝はしていない。 佐賀北は馬場、広陵はこれまでずっと勝ちあがってきた野村が投げた。一回は広陵も佐賀北もほぼ対等だったが、二回に馬場が広島打線につかまり、2点を先取されて久保にスイッチした。こんなに早く交代するのは初めてだ。 久保は2点で押さえ、そのあと点は許さないものの毎回出塁させる。広陵の野村は二回からはきっちりと押さえ、佐賀北のつけいるスキを全く与えない。その状態で七回まできて、久保が今大会初の失点を許す。2本のヒットと死球で2点を与えてしまった。ここでもう勝負は決まったと思った。佐賀北のヒットは1本のみで、野村のコントロールも良く四死球も与えない。相手は毎回出塁で二桁安打と一方的である。 佐賀北に好機がようやく巡ってきたのは八回裏である。1アウトのあと打順はピッチャーの久保に廻ってきた。久保はそれまで空振りしていた野村のスローボールにバットを合わせて甲子園初のヒットを打ち一塁に立った。次は守備で活躍していた馬場崎に代わり新川が打席に立った。新川は皆が打てなかった野村のスライダーをきっちりとヒットとし、代走の松尾に代わった。百崎監督の新川なら野村のスライダーを打てるだろうという読みが当たった。次の辻は四球を選び満塁となった。アウトカウントは1。打席は井手の番である。井手はストライクゾーンギリギリの球に手を出さず四球で押し出しの1点を取った。この球は判定が難しく、後で広陵の中井監督が審判にクレイムをつけ、問題になった球である。そして劇的な逆転満塁ホームランのシーンがやってきた。押し出しの1点がなければ、逆転にはなっていない。 三番バッター副島が打席に立った。甲子園ではすでに2本の本塁打を打っているが、広陵、野村に前2打席を三振で討ち取られている。一球目はファール、二球目は死球すれすれの近めのボール。そして、三球目は真ん中に入るスライダーを副島は見逃さなかった。決して大振りではなく、ジャストミートを心がけたと後で言っていたが、バットの芯が球を捉えた。レフト中段に入るまさに劇的、テレビを見ながら目と耳を疑った。一瞬、何が起こったのかよくわからないような状態になった。このような状態を息を呑むとか、頭が真っ白になったと言うのだろう。 大歓声の中を副島が走る。そして、先にホームベースに入った打者三人が迎える。ダッグアウトの前でも全選手が迎えた。野村はまだ信じられない顔であったが、いつものペースにもどり、そのあとヒットは許したものの追加点はなし。 九回表、広陵の攻撃で、ノーアウトでヒットが出る。広陵の力であればここで、同点あるいは逆転の可能性がある。息を殺して見ていたが、次の打者が一塁前に送りバント。一塁手が前に出て、打者にタッチしている間に、一塁走者が二塁を走り抜け三塁に向かった。一塁手ははっとそれに気づき、三塁へ好球を投げ、三塁手副島がタッチしてアウトとなった。これで広島の攻撃は2アウト走者なしとなった。最後は野村が打席に立ち、渾身の力で投げる久保のスライダーを三振してゲーム終了となった。随分長く感じた試合であった。
試合の余韻を味わいながら、閉会式が終るまで、テレビを見ていた。

