柳川

柳川の川下り

 佐賀に一泊して、翌日、バスで柳川に向った。私が佐賀に住んでいる頃は、佐賀線といって、佐賀から福岡県の瀬高まで国鉄が通っていた。佐賀線が廃止されてからは、柳川までバスが頻繁に通っている。途中、筑後川に架かっている昇開橋を見ることができる。
 1時間ほどで西鉄柳川駅に着いた。今回の4泊5日の旅で最も期待していた場所である。中でも川下りと鰻のせいろ蒸しを食べることが目的といってもよい。
 西鉄柳川駅に着いてすぐ、観光案内所に立寄り、川下りの乗船所の場所を聞いて、一番近い乗船所で川下りのどんこ舟に乗ることにした。すぐ前に一艘が出たばかりで、「お客さんが集まるまで待って下さい」と云われ、待合室で待っていると2組の若いカップルが入ってきた。乗船所の前に一艘の舟が泊まっていて、ひな壇とたくさんのまりや人形、布で作った花などがぶら下がって飾ってあった。一月だというのにもう雛飾りなのかと思った。
 私が着いて、30分程の時間が経ったので、3組の客を乗せて、舟が出た。舟の中にはコタツがあって、暖かくなっている。天気も良く、気分の良い川下りが出来そうである。川といってもほとんど流れがない。堀に近い状態だ。約1時間かかるという。川辺にはしだれ柳の木が植えられていてのどかな景色が続く。舟はたくさんの橋をくぐって船頭さんの艪漕ぎで進んで行く。艪といっても竹ざおである。橋の下にくると船頭さんだけが前に屈んで通る。水かさが多いとお客も前に屈まなければならないようだ。船頭さんがいろんなお話をしてくれ、北原白秋の歌まで歌う。それを聞きながらゆったりとした一時間を過ごした。
 柳川藩の藩主別邸であった、「御花」の前の下船場で舟を降りて、まずは鰻の蒸篭蒸しを食べようと思い、その元祖と云われている「本吉屋」の支店に入った。普通のうな重に近いが、タレをかけてさらに蒸すようだ。やや味が濃いかなとおもった。以前、鰻が大きくて、厚みがあると聞いていたが、それほどのボリュームではない。
 鰻の蒸篭蒸しを食べて、これで目的は果たしたと思い、あとは足のおもむくままに歩くことにした。

 船頭さんから柳川の名物、雛飾りのことを聞いていたので、「かんぽの宿柳川」に立ち寄った。ここの雛飾りが最高で、この時期に、これを見過ごしては柳川に来た甲斐がないほどだそうだ。たしかにこれほどきらびやかな雛飾りは見たことがない。雛壇だけでなく、つるし雛「さげもん」といわれる、紐で吊るした毬や人形、花などの飾り物がきれいだ。雛壇のそばの人形も可愛くて、何枚もの写真を撮った。伊豆稲取の雛の「吊るし飾り」と山形県酒田の吊るし雛「傘福」とともに三大吊るし雛と云うそうだ。そう云えば、稲取の温泉宿で見たような気もする。
 簡保の宿を出て、左にそれ、前の大きな堀が川のように狭まったところに架かっている橋を渡り、「御花」の邸内に入った。「御花」は私が小さい頃に行った経験がある。剣道の試合で柳川に来たときだったような気がする。邸内は昔の柳川藩主が使っていた和風の別邸と明治以降に出来た洋館があり、松涛苑と呼ばれる庭が美しい。ここは今でも結婚式や披露宴などに使われている。
「御花」を出て、舟で来た川の岸辺にある遊歩道をひとりでのんびりと歩いて、柳川駅に向った。天気も良く、暖かな午後である。この道は、北原白秋が「御花」の近くの生家から伝習館中学校へ通った道で、「白秋道路」と呼ばれている。静かで、歩くのが心地よい。柳川の町で最も印象に残ったのが、この麗らかなひと時である

川辺の風景吊るし雛さげもん御花筑後川昇開橋