今月の4日に久しぶりのコンサートで、サントリーホールに出かけた。一昨年12月のNHK音楽祭以来である。演奏者の目当ては同じ諏訪内晶子、オーケストラはサカリ・オラモ指揮のロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団である。
料金が安かったからかもしれないが、会場は満席で、希望していたS席が取れず2階のA席であった。
演奏曲目はコンサートオープン用として、マーティンソンの「オープン・マインド」、これは聴きなれない曲である。なんとなく聴き過ごした。次がこれを聴くために来たと云って良い、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」で、勿論、ヴァイオリンは諏訪内晶子である。真紅のドレスを着た華やかな衣装で、ドレスのスリットからスラリとした彼女の脚が見えて眩しい。残念ながら、席が第一希望で申込んだS席ではなく、2階のA席だったため、遠くから見た印象である。
この曲は彼女のCDデビュー曲である。1996年にネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団との共演で録音している。私もこのCDは何度も聴いている。今回の演奏では、CDでの若さに満ち溢れた演奏から、円熟味の増した、聴衆を圧倒的に惹きつける演奏に変わっている。一昨年のシベリウスと同じように、諏訪内晶子の集中力がオーケストラをぐんぐん引っ張っていくのは同じだが、違うのは今回のオーケストラがサカリ・オラモ指揮のロイヤル・ストックホルム・フィルできわめてまじめな演奏をやってくれたことである。一昨年前のフィルハーモニア管がイギリスの名門で、独奏者に対する対抗意識みたいなものがあったのとはかなり違っていた。その分だけ迫力が欠けたとも云えるが、独奏者と指揮者、オーケストラのコンビネーションは素晴らしいと思った。諏訪内とオラモはシベリウスのヴァイオリン協奏曲のCDも出しているし、オラモが主席指揮者を勤めているロイヤル・ストックホルムフィルとの共演は何度も行っているので、信頼関係は厚く、当然と云えるのかも知れない。
アンコールで、諏訪内はバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタを演奏したが、2台のヴァイオリンで演奏しているような弾き方である。曲全体にわたって通奏低音が聞こえる。バッハらしいバロック音楽の最高峰の演奏で、極めて高度なテクニックを披露してくれた。
私の席はA席で2階の中間くらいの席であったが音響的には極めて良い席だと思った。ヴァイオリンの音が冴え渡り明瞭な音になっていた。サントリーホールの球形のドームの中でステージに相対するような席だった所為か、残響音が冴えて聞こえる。NHKホールの一階の中程だとそれがない。最後の曲はマーラーの交響曲第一番「巨人」であったが、オーケストラと指揮者の一体感がすばらしく、あたかも一つの楽器を演奏しているように聞こえた。管楽器と打楽器の強弱もすばらしかった。
帰ってから、我家のオーディオであの音を再現してみたが、2チャネルステレオCDでもサラウンドにするとコンサートホールに近い音になる。書斎のオーディオでも単なるステレオ機器ではあるがサランネットをはずしたら、ヴァイオリンの音が良く響くようになった。
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番 諏訪内晶子 1998年

