10月初めの尾瀬、草紅葉で黄金色に包まれる風景を期待して登った。尾瀬に行くのは多分、20代の頃以来である。昔、登山や旅行雑誌に掲載されていた尾瀬の草紅葉の写真、木道の周りをはるかかなたまで黄金色の草で囲まれている風景を見るのは長年の憧れであった。それを最新の一眼レフカメラで撮影できるというのは写真雑誌の世界でもある。
新聞の広告に載っていた「日帰りで行く尾瀬」の広告を見て、衝動的に申し込んだ。天気次第で写真は勿論、旅行そのものの気分も変わる。幸いなことに好天気とはいかないけれど、薄曇り、時々晴れの天気であった。朝6時50分に我孫子発のバスで関越道を通って、登山口の鳩待峠に着いたのが11時である。それから山を登る、というより、峠を下る。帰りが心配になるほど、下りっぱなしである。一時間程で、左に至仏山の紅葉が見えるようになったら、すぐに「山の鼻」に着いた。
ここには公衆トイレがあり、観光センターや国民宿舎もあった。ベンチに座って昼食をとる。食事を終えて、すぐに尾瀬ヶ原の木道を歩く。木道に入ると一面、草紅葉の世界になった。日光の戦場ヶ原の草紅葉(?)は数年前に歩いたが、あそこは草が枯れていたのに対して、こちらは草がまだ枯れずに、紅葉になっている。気温や湿原の水の影響で、枯れずに紅葉するようだ。日光でも小田代ヶ原まで行けば、草紅葉が見れるという。いずれにしろ、草が紅葉して見える期間はほんの少しの間のようだ。尾瀬でも10月初めから山小屋が閉じ始める10月半ばまでのようである。
尾瀬のもう一つの魅力は何といっても、点在する池塘とその水面に浮かぶヒツジ草、そのあいだに写る青空、山や紅葉した木々の景色である。ときどき、エゾリンドウや吾亦紅(ワレモコウ)の花を見つけた。リンドウと同じ色のトリカブトの花も綺麗だ。 日帰りのバスツアーで帰りの集合が3時半だと云うので、2時頃に牛首分岐に着いて、ほんの少し休憩したあと、同じコースを鳩待峠に戻った。名残惜しくて、帰りの木道はずいぶん短く感じた。行きでどんどん下った分だけ、帰りの登りは大変だと思っていたが、意外と簡単に戻ることができた。 3時半になると、この季節はもう夕暮れになってくる。バスに乗っている時間が9時間、歩いたのが4時間半だから、ほとんどがバスの中で過ごしたわけだが、小説を読んでいたので、退屈せずに済んだ。
尾瀬と云えば、水芭蕉の花が咲く6月からニッコウキスゲの群落に囲まれる8月初め頃が最も良い時期である。私が若い頃は、沼田まで夜汽車を使い、路線バスを乗り継いで、戸倉経由で大清水まで行き、大清水から三平峠を越えて長蔵小屋までたどり着いた。尾瀬沼の周りを散策して、帰りは尾瀬ヶ原を突っ切り、富士見峠まで登るのが普通であった。
このコースはかなりの距離を歩くので、当然のことながら、登山をする覚悟が必要で、日が短くなる秋に尾瀬に行くことは少なかった。今は鳩待峠までバスで行けるので、多くの観光客が尾瀬を訪れて、高山植物の群生する広大な景色を見ることができる。木道も整備されており、登山の雰囲気は薄いが尾瀬に来たという気分は満喫できる。ただ、夏のシーズンは木道が人で混雑して、ゆっくり写真を撮っている暇もないのかもしれない。












