東響定演第590回での諏訪内晶子

東京交響楽団590回定期演奏会

 3月23日に予定されていた「ロン・ティボー国際音楽コンクール ガラ・コンサート」に行く予定であったが大震災のため中止になり、6月11日、今年初めてのコンサートを聴いた。場所はサントリーホール、演奏はクシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団。バイオリン協奏曲の独奏者は諏訪内晶子である。諏訪内が出演するコンサートはほとんど満席になるが、今回は90%程度の込みようであった。満席にならなかった原因は、多分、曲目があまり知られていないことだったと思う。
 最初はルトスワフスキ作曲の「小組曲」、二番目の曲がシマノフスキの「ヴァイオリン協奏曲第2番」、そして最後がショスタコーヴィッチの「交響曲第10番」である。ルトスワフスキの名は日本ではほとんど知られていないが、ポーランドでは代表的な作曲家の一人である。また、シマノフスキもポーランドの作曲家で交響曲やピアノ曲で名が知られている。ショスタコーヴィッチはソヴィエトの作曲家として有名だが、「第10番交響曲」はスターリンによる形式主義批判に開放されて作曲した最初の交響曲で「交響曲第5番」についで有名な曲である。
 このような曲が選ばれたのは、指揮者のウルバンスキがポーランド人であり、まだ29歳という若さで、極めてエネルギッシュな指揮をすること。すでに日本でも2009年11月に大阪フィルの定期演奏会でショスタコーヴィッチの第10番を振っており、このときの解放感に満ちた演奏で、圧倒的な支持を得たためであろう。今回の演奏会も勿論、ほとんどの観客が諏訪内晶子の演奏を聴きに来た人達であったと思う。シマノフスキの曲は彼女のCD「メロディ」に収められているヴァイオリンとピアノのための曲「神話-3つの詩」がある。シマノフスキの「ヴァイオリン協奏曲第2番」は単一楽章で、独奏部と合奏部がより明確に分かれているようである。合奏部では昨年のブルッフや一昨年のシベリウスと同じく、諏訪内のヴァイオリンがオーケストラをぐんぐん引っ張っていくと思っていたが、指揮者のウルバンスキの若さにやや負けていたのかもしれない。それより彼女の円熟味が増して、若手の指揮者を立てる演奏に変わっているのかなと思った。とは云っても独奏部での緊張感や高音の美しさは昨年とちっとも変わりはない。昨年3月の衣装は真紅のドレスで彼女のスリムな体型を引き立てていたのに、今回は落ち着いた色のコバルトグリーンにスパンコールをあしらった衣装に変っていた。体型もやや円みを増したのかもしれない。アンコールで演奏した、バッハの無伴奏バイオリンソナタは彼女の技量が落ちてはいないことを証明していた。
 最後の曲になるとなんとなく眠くなってしまうことがあるが、約1時間もの間、そのようなことはまるで無かった。ウルバンスキのショスタコ10番は凄いの一言につきる。東響のオーケストラとしての実力はN響に負けないものを持っていると思うが、その実力を最大限に発揮させる指揮であった。この曲のCDを買ってもまずこのような圧倒的な音響を引き出すことなどできようがない。やはり、サントリーホールで聴く大音響でなければならない。出だしの陰鬱な雰囲気のするこの曲が、最後は歓喜に満ちた熱狂的な演奏で終わった。ブラホーの声と拍手がなりやまなかった。